
玄関は、屋根に届く雪が積みあがり、1階部分は埋まり居間は真っ暗。2階で寝起きしていると話す津南町羽倉の久保田なつさん(81)。「18年豪雪の時は、もっとすごかったな。家全体が埋まったようだった」。だが、今冬の雪は、11ヵ月前の県境地震が影響している。「ひとりで頑張ってきたが、この雪で、踏ん切りがついたな」。3月から、町内のケアハウスに入ることに決めた。
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7年前に農業事故で夫、政栄さんを亡くす。子どもはいない。以来ずっと独り暮らし。築後150年という家は、夫の曾祖父が建てた古い家。政栄さんは、時間ができると家の修繕を行い、古い家ながら、あちこちに手直しした。「父ちゃんのおかげかな、地震で天井が落ちなかったのは」。
昨年の3月11日、東日本大震災の東北の被災状況をテレビで見ていた。「あの時は、ここら辺も二回ほど長い揺れが続いた。今度は、こっちにくるかなと思って、寝る部屋の戸をあけて、あの日は寝たんだ」。
日付が変わった翌12日午前3時59分。「ドーンというすごい音で目が覚め、すぐに家から飛び出した。揺れより、音の方がすごくて、揺れはあまり覚えていないな」。隣の人が、『家の車に入らっしゃい』と声をかけてくれた。
夜が明けてから家に戻った。壁は落ち、戸ははずれ、仏壇は倒れ、敷居はゆがみ、食器棚は倒れ、「家の中はめちゃくちゃだった。でも、天井は落ちなかった。父ちゃんのおかげかな、と思った」。
昨年も大雪だった。あの地震がひとつの契機になった。春5月。「もう年だし、踏ん切り時かな、とね」。津南町内の経費老人ホーム「ケアハウス」入居を申し込んだ。
「本当は、ここでずっと暮らしたいよ。保健師さんにも話してるんだよ。『ここで死んでもいい』と。でも、もういいかな、と思ったんだ」。夫婦で頑張って守ってきた家。思い出が染み込んでいる家。でも、「もう充分、頑張ったよ」。自分に言い聞かせている。
津南町は、独り暮らし世帯などに除雪費支援を毎冬行い、除雪補助券3枚(1枚9500円)を、今冬は2枚増やし支援している。だが、「1日中、除雪してもらうと、すぐになくなってしまう」。
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ケアハウスから連絡が入った。『2月から入居できます』。いざとなると、なかなか腰が上がらない。「この寒い時、引越すのは大変だて。3月からにしようと思っているんだが…」。雪に埋もれた我が家が、やはり愛おしい。真っ暗な1階の居間には、石油ストーブが一つ。持ち物は、最小限に片付けている。田んぼはすべて人に任せ、野菜は自分で作る。「なんせ、農業しか、しなかったから」。越冬野菜はたっぷり備蓄している。
久々に青空がひと時顔を見せた31日。「これから、玄関屋根の雪掘りをするんだよ。これくらいは自分でしないとね」。政栄さん手作りの丸いカンジキをはき、手ぬぐいを頬かむり、身支度を整えた。「やっぱり、自分の家が一番さ。でもね…」。
3月からはケアハウス暮らし。春には、家を取り壊すつもりだ。「雪になんて、負けちゃいられないが、独りでは、どうしようもないて」。笑顔が、ちょっと曇った。
写真・一時の晴れ間をみて、玄関屋根の除雪に向かう久保田なつさん。「これまで頑張ってきたが…」(1月31日、津南町羽倉で)