2年後の2015年から新たな医師資格「総合診療医」が認定され、その新臨床研修を新潟県内で初導入する新十日町病院。さらに県内初となる病院内「救急ステーション」を設置する。高規格救急車と救急救命士が常駐し、必要に応じドクターカーが救急出動するなど、病院と消防の救急活動が直結した形になる。十日町地域消防本部では「救急救命がさらに充実し、医師と現場の救急隊員との連絡が密になり、地域の救急救命率が格段に上がる」と話す。雪国のハンディに加え、病院から遠い山間地域を抱える地域医療にあり、新十日町病院の医療充実と共に、救急救命分野でも県内先駆けのモデルが、新十日町病院に誕生する。
先月27日の十日町地域広域事務組合議会で、消防本部は『十日町地域救急ステーション』を説明した。山間地が多い十日町・津南地域。地域医療は「命を守る」救急医療でもある。
5年前、地元医師会や行政機関で「十日町地域メディカルコントロール協議会」を設立。救急医療を支える「地域ワークステーション」構造を提案。3年後、第2次十日町地域消防再編計画に盛り込まれ、今年2月「十日町地域救急ステーション」計画が決まり、全面改築する十日町病院内への設置が決まった。
救急ステーションは2年後の2015年12月完成の外来病棟1階に設置。通信システムなど導入後、翌年4月から運用開始する。
ステーションには高規格救急車と3人の救急救命士が常駐。昼間は管理担当1人を配置。24時間3交代制で9人の救急救命士が担当、2ヵ月単位で交代する。 現在、十日町地域消防には114人の消防士がおり救急救命士資格者は23人。同ステーションは救急隊員の実施研修の場にもなる。特に医師との関連が密になり、十日町地域消防本部では「臨床現場に直結する重要な研修の場になる」と救急救命士育成に期待する。
さらに『医療情報ネットワークシステム』が地域医療を充実する。魚沼医療圏で今年から試験的に実施。
県立十日町病院・塚田芳久院長は、医療情報の共有が安心度を増すという。「医療情報の共有で、どこで、どんな発症をしても、その場の医師が医療情報を見て適切な対応ができる。地域にとって大きな安心に結びつくはず」。さらに「マイナンバー制」「電子カルテ」の導入も視野に入れる。救急車にタブレット端末を常備し、救急患者の情報が瞬時に分かり治療に役立つ。
十日町市中魚沼郡医師会・富田浩会長も医療情報共有の必要性を力説する。「医療情報ネットワークは12月から試験的に始まる。薬情報を含めるとさらに充実し地域の安心度が増す」。医療情報ネットワーク化個人情報との関係で当事者の承諾が前提だ。
十日町地域消防本部・警防課長・田村信二消防指令長は、救急ステーション院内設置の意義の大きさを語る。「これまで消防署から出動した救急車が、病院と直結する救急ステーションから出動する。救急救命士と医師の密接な連携ができ、救急救命活動が充実する。雪国立地を考えると院内設置で機動性もアップする。地域医療における救急救命の一つのモデルになるのではないか」と話す。
院内救急ステーションの設置は新潟県内初。新潟市の市民病院にもあるが病院との併設。新十日町病院が地域医療の拠点になることは間違いないが、「総合診療医」の新臨床研修の県初導入、さらに院内救急ステーションの県内初設置など、山間地域を抱える地域医療の拠点である病院の「あるべき姿」のモデルになることも、間違いない。
(連載・新十日町病院と地域医療は恩田昌美が担当しました)
写真・24時間体制で救急を受ける十日町病院。新体制に期待があつまる