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2012年03月の津南新聞「トピックス」

過去の津南新聞トピックス
新連載「遠い春」 残雪2b余、農業全般に影響  3月30日号
 一面の雪原。この2b余の分厚い雪の下で出番を待つ大地。だが、雪はなかなか消えない。あの「平成18年豪雪」を上回る残雪量で、農業など産業はじめ野外活動に大きな影響が出つつある。雪消えの遅れは、雪国にとって、「遅い春」を意味し、大地を使う農業や野外スポーツなど、様々な分野に影響を及ぼす。特に今期、1年前の県境地震で大きな被害が出ており、その災害復旧が雪で大幅に遅れており、この残雪でさらに遅れが懸念される。いまだ雪原状態の津南・十日町・栄村地域の「遠い春」を連載でリポートする。


 背丈を越える雪壁を背に、ロータリー除雪機が雪を飛ばす。出荷シーズンを迎えている当地特産の「雪下ニンジン」が、この雪の下に眠る。
 標高420bの津南町沖ノ原で、約1fの雪下ニンジンを耕作する島田敏正さん(64)。今月初めから畑の除雪を始め、出荷を始めている。10eずつ除雪するが、2bを越える残雪は、この除雪機で3日ほどかかる。20aほどの残雪を残し、その雪消えを待って、青々と葉をつけた雪下ニンジンを地中から掘り出す。

 「雪消えがとにかく遅い。それに気温が低く、午前中は雪が凍っていて除雪できない。今年の雪は下が固く、なかなか消えない。次の作業が控えているのに…」。雪下ニンジン除雪は、1日1万円ほどの燃料費がかかっている。今が旬で、出荷シーズンのピークを迎えている雪下ニンジンだが、残雪の多さが生産コストをあげている。沖ノ原は、いまだ230a余の分厚い残雪に覆われている。

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 平成18年豪雪の津南町役場前観測点で雪が消えたのは5月5日。この時の最高積雪は362a(1月12日)、累計降雪量は2242aに達した。この年は3月20日以降に4回も断続的な降雪があり、同年3月29日の残雪は195aであった。
今冬はどうか。18年豪雪とほぼ同じ残雪がある。29日朝で津南町役場観測点で214a。沖ノ原と同じ標高の津南原アメダスは255a。今月20日以降、やはり4回の降雪があった。融雪促進剤を散布後、再び降雪があり、真っ白な雪原になるなど、遅い降り止りに関係者は頭を抱える。

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 標高2百bから1千bまで耕地を持つ津南町。自然からの恵みの河岸段丘は、そのまま「エレベーション農業」ができる地でもある。標高に応じて、野菜などの農産物の作付け時期を動かして作ることができ、同じ作物でも標高差を活用した計画出荷ができる。

 だが、この残雪は、その営農計画を大きく狂わす。営農指導するJA津南町営農部・内山優部長は、「すべてに影響する」と話す。出荷シーズンを迎えている「雪下ニンジン」は4月20日頃までが出荷のピークで、「5月に入ると価格が下がり、地温が上がり、品質低下につながる」。さらに深刻なのは、野菜生産の畑作と稲作の水田作業と重なり、「すべてが同時進行になり、作業手順や労力配分が大変。特に、雪消えの遅れで、畑、田んぼ共に、ある程度、乾かないとトラクターは入れない。これ以上、雪消えが遅れると、減収を含め、農業全体に大きな影響が出る」と懸念している。

 とりわけ深刻なのは「アスパラ」。雪消えの遅れは、成長の遅れにつながり、出荷シーズンが7月10日前後までとなっているアスパラにとって、収穫の遅れは、「そのまま減収につながる。ただ、昨年のような高値なら、なんとか持ち直すこともできるが…」と見ている。

 新潟県や長野県では、雪消えの遅れ対策で消雪促進などの助成事業を行い、津南町や十日町市、栄村でも県事業を受け、農家負担の軽減に乗り出している。
この残雪。消雪予想は5月8日頃という。

写真・250a余の残雪を背に、雪下ニンジンの収穫のために除雪する島田敏正さん(27日、津南町沖ノ原で)

竜ヶ窪取水計画を断念、上村町長「これ以上の混乱避けたい」 3月30日号
 津南町の上村憲司町長は28日夜、竜ヶ窪の水問題で慣行水利権を持つ谷内集落の要望で説明会を開き、「竜ヶ窪からの取水計画は断念する。地元にご迷惑をおかけし深くお詫びします」と参加住民40人余に頭を下げた。同計画を進めた町は、28日付文書をで谷内、岡の全戸に配布し、取水計画の断念を通知。29日の町臨時議会後の全議員協議会で上村町長が説明し、「取水計画は白紙」と今後については言及しなかった。

 業界2位、国内9千店のシェアを持つ大手コンビニエンスストアが竜ヶ窪からの取水し、飲料水販売を計画した水問題。昨年11月の地元説明から5ヵ月、地元を賛成、反対と二分した

 水問題は、「当初から一方的に強引に進める考えはないと申し上げてきた。計画を断念する」(上村町長)と、地元の多数の同意が取られないため「これ以上の混乱は避けたい」と、町長トップ判断で計画の断念を決めた。
 
 町は、2月の谷内地区の住民意向調査後、「反対50%」を重く受け止め、2月28日、企業の常務が来町、さらに15日、27日に町担当課長が企業本社を訪問するなど、企業側と協議を重ねてきた。15日の協議では企業側から「4月末がリミット」と方針が出され、27日には、「竜ヶ窪からの取水を断念」と町側の意向を伝えたもよう。ただ同大手コンビニが、新潟県が「産業協定」を提携する唯一の民間企業でもあり、今後とも関係の継続を摸索する意向を、企業側には伝えたもようだ。

 28日の谷内地区説明会では上村町長に対し、「これだけ地元を混乱させた責任が町長にはある。どう責任を取るのか」など厳しい意見の一方で、「行政が計画断念を決めた以上、谷内の中でいつまでのわだかまりを持っていてもしょうがない。賛成、反対、すべてノーサイドにすべきだ」など、地域内の融和を求める意見も出た。

 上村町長は本紙取材に対し、町の進め方について「拙速さがあり、説明不足があったと思う。私自身の認識の甘さがあった」。一方で「地域振興を何とかしたいと考えて動いた方々の熱意を削ぐようなことはできないという思いだ」。今後については「全く白紙」と話す一方で、「地域振興を考える中で、パートナーとして民間活力との連携は考える要素があり、特に今回、新潟県が産業協定を結ぶ企業だけに、何が今後連携できるか研究したい」と話し、今回の水問題でできた関係を、津南町振興につなげたい考えだ。

写真・「計画断念」を地元民に説明する上村町長(28日、谷内公民館で)

3343灯の「ありがとう」、上郷中学フイナーレ  3月30日号
 ◎…「ありがとう、上郷中」の想いを胸に、生徒や住民3百人余が集い学校との別れを惜しんだ。3月末で閉校の上郷中(中川久男校長、23人)の生徒らが企画の感謝祭が23日に開かれた。校庭に65年の歴史で巣立った卒業生3330人と最後の1・2年生徒数を合わせた3343個のキャンドルを灯し校舎を照らした。逆巻の河田一二さん(74、6期生)は「昔は3百人がいた学校が無くなるのは寂しい。みんなこの学校があったことを覚えていてほしい」と上郷の歴史が詰まった灯を見つめていた。
 
 ◎…住民や生徒手作りのキャンドルで上郷中のシンボルで、初期生徒から図案公募し決めたというふたつのペンが斜めに交わった校章と、県境の地に渦巻く信濃川をデザイン。特別棟で思い出のスライド上映や卒業生保護者による特別演奏会後、暗幕を一斉に開け、キャンドルを披露すると「きれい」と大歓声。最後は雪原で生徒と住民が一緒に校歌を合唱し校舎に感謝を捧げた。最後の卒業生のひとり、島田由美さん(15、宮野原)、将来の夢は介護福祉士。「地震で最後の年は校舎に入れず、友だちも被災したけど、より協力し合う気持ちが生まれました。一生この上中の絆を忘れずに頑張りたい」と笑顔を見せ、思い出深い校舎に別れを告げた。なお同日の様子はNHK・Eテレで4月20日放映予定だ。

増田寛也元総務大臣、津南で講演、「豪雪も武器、地元学を」  3月30日号
 「日本全国過疎化に苦しんでいる。まず地域の情報を公開し、知恵を求める。危機が大きいほど有効なやり方だ」。元総務大臣の増田寛也氏は自治体の積極情報発信を促した。安倍、福田内閣で総務大臣を務め現在は東京大学公共政策大学院客員教授の増田氏は26日、津南町に訪れ講演。自立(自律)をめざす過疎の町に「何が豊かかという価値観の尺度が同じならば大都市が勝つ。違う尺度で見て、歴史文化を伝える地元学が必要。地域の誇りが次代に繋がる」などとアドバイスした。
 
 増田氏は町議の桑原悠氏の指導教官の縁で来町。平成の大合併を振り返り「平成16年に地方交付税が大幅に減り合併に飛びついた所が実は多い。だが押し付けられて仕方なく、という地域はより苦労している」と指摘。さらに「地方交付税は黙っていれば国が補てんする、ではなく、必要最小限を補てんするもの。多くの自治体がそれを忘れている」と自主財源確保の必要性を説く。一方、津南の農業政策では「米が20億、花卉が5億余、畑作は13億余。それに全体でどれだけ付加価値を付けるか。農産地として生産者の顔が見える取り組みなどすべき」とアピール力強化の必要性を話した。
 
 岩手県知事を当時最年少の43歳で当選し3期連続務め、地方の実情に詳しい増田氏は都市集中型の現代視点も疑問視。「今はお金一辺倒。東京は財政を見れば確かに大きい。ではエネルギーはどうか。電気は福島、新潟など外部に頼り、自給率はほぼゼロ。自立は財政だけでなく、エネルギー、食糧でもみるべき」と言及。さらに今冬の豪雪報道を例に「雪が降るのは大変、という一律の考えで見がちだが、豪雪ひとつの武器。逆に津南から積極的に情報を出すのが大切。過疎、高齢化が進む地域だが、隣近所の付き合いで解決している。共同体とは何かを大震災を契機にもう一度考えるべき」と語った。

候補地は現在地と十日町高東側、名称は「越後妻有文化ホール」  3月30日号
 注目の建設場所は2ヵ所併記に―。十日町市市民文化ホール(仮称)の建設検討委員会(委員長・桜井俊幸魚沼市小出郷文化会館長)は23日、建設場所について「中心市街地活性化基本計画策定中のため1ヵ所に絞るのは時期尚早」として『現在地周辺』と『十日町高校東側周辺』のいずれかが望ましいとし、客席は「6百〜8百席程度の馬蹄形」とする答申書を関口芳史市長に提出した。
 
 建設の基本理念は「質の高い芸術文化の提供と創造」「子どもの感性を磨く」などとし、建設場所については、中心市街地の活性化を基本に3ヵ所を検討。うち面積が狭く駐車場の確保が難しいとする「本町分庁舎西側周辺」は除外。また当初、現在地は土石流危険区域で建設困難と示されたが、建設が可能なことが判明し候補に残った。ただ「用地買収は不要だが、アクセス道路改修の見通しは厳しい」などを課題に挙げている。一方、十日町高東側は「周辺連携で最も駐車場を確保でき交通アクセスがよいが、用地買収が必要」などとしている。
 
 ホールの名称は、大地の芸術祭で知名度が上がっているなどから『越後妻有文化ホール』とした。客席は「6百〜8百席程度」の馬蹄形。1階は5百席程度とし2階席とはカーテンで仕切れるようにする。舞台わきに花道や仮設型オーケストラピッチを設ける。
 なお、公民館機能については「老朽化で建替えの必要性が高まっている。形態や文化ホールとの併設については市当局で検討してほしい」としている。
 
 桜井委員長は「主役は市民。市民が使いやすいよう答申を最大限に反映させてほしい」と要請。これを受け関口市長は「理念と使命にしっかり議論いただいた。答申を最大限尊重していきたい」と語った。計画では今年度、庁内で調整後、25年度に実施設計を行い、27年度には工事着工する方針だ。

写真・600〜800席で答申した文化ホール予想図

国重文の東京駅、100年前を復原、世界最大規模の免震化  3月30日号
 国の重要文化財指定(2003年5月30日)のJR東日本・東京駅の全面的な保存復原・改修工事は5月末完了。百年前の建設時の南北ドーム、幅335bの赤レンガ駅舎の東京駅が姿を現し、保存復原された駅舎で6月から営業を行う。東京駅利用者にとって懐かしい駅舎ホテルは「東京駅ステーションホテル」となり10月開業。貴賓室やスイートルーム(150平方b)、一般客室150室など伝統の駅舎ホテルが誕生する。今月26日、工事が進む東京駅舎が十日町記者クラブなど報道機関に公開された。

 東京駅は1914年(大正3年)建設。日本銀行本店などを設計した辰野金吾が設計。大戦の空襲を受けながらも赤レンガ駅舎は残り8年前、国重要文化財に指定。保存復原・改修工事は07年5月着工。今回の復原工事では、世界に類を見ない免震工事が行われた。東京駅舎は全長335b、この建物全体を免震化。この規模の免震工事は世界初で施工の鹿島の技術力に、世界の建設・耐震関係者が注目している。駅舎の基礎350ヵ所に免震工事。JR東では「世界初の免震化工事。日本の技術力の高さに世界が注目している」と説明し、文化財保存と共に新たな東京駅の歴史のスタートを強調した。

 保存復原工事では同駅舎の「空中権売買」、つまり建物上空の空間部分の売買などで総工費5百億円の工事費の一部を捻出している。

 赤レンガと銅版に覆われた駅舎は当時の3階建に加え、地下2階(駐車場など)を増設。駅舎のシンボル、南北ドームは8角形の3階吹く抜け。ドーム内には8羽の鷲(わし)レリーフが掲げられ、8方向には方角を現す干支が彫刻。スイートルームからは皇居が真正面に見えるなど当時の雰囲気そのままに復原される。すでに同ホテルの婚礼予約は受付を開始し、一般ホテル予約も近く予約受付が始まる見込みだ。駅舎周辺は高層ビルが隣立するが、東京駅一体は「タイムスリップエリア」で世界的な歴史遺産になるスポットとなり、外国の注目度が増すものと見られる。

写真・保存復原工事が進む東京駅(3月26日、現場で)

津南食まつり、郷土食や創作料理が80品  3月23日号
 津南の美味しい料理で元気いっぱい―。地元食材を使った伝統食や創作料理が一堂に並ぶ第6回「津南の食まつり」は19日、ニュー・グリーンピア津南で開き、料理は主催の町生活改善グループ連絡会(桑原幸枝会長、53人)が準備。2年前に発刊した津南料理集レシピに載る伝統食煮なます、さらに車麩の甘辛フライといったアレンジ料理など80種余がテーブルにずらり。初参加の森口恵子さん(57、宮野原)は「今は伝統料理を習い、実際に口にする機会は少ないので、参考になりますね」と興味深そうに試食していた。
 
 昨年は県境地震で中止、2年ぶりの開催。今回のテーマは「食は元気のもと!!津南の料理集の再現」。一般参加もでき、試食食べ放題と出品料理のレシピ付の盛りだくさんの内容は関心を集め、この日は110人余が参加し今年も好評。同連絡会最年少の原田彩子さん(29、中子)は健康食豆富を使ったお菓子「とうふクリームのミルクレープ」を出品。米粉と豆乳も使用し、ほんのり甘い優しい味に仕上げた。原田さんは「お菓子作りが趣味で、子どもも大人も好む味にしてみました。食まつりに出る他のお母さん方の料理は凄く参考になります。来年も出品しますよ」と笑顔を見せた。

連載「震災地はいま」 栄村地区「将来課題、震災で突然目の前に」  3月23日号
 いまだ2bを超える雪に覆われる震災地、栄村。その被害のツメ跡は、深い雪の下だ。1年前、同じように2b余の残雪のなか、3月12日の県境地震は、寝静まった県境地を直撃。震度6強、6弱2回の激震に三度襲われた人口2千2百人余の村は、まさに「未曾有」の被害を受けた。

 全半壊202棟、一部損壊486棟、全世帯の78%が被災。車庫・倉庫の全半壊290棟。農地農道・水路1137箇所、国県村道217箇所など。数字を並べるだけで村政史上、最悪の震災被害となった。村がまとめた被害額は国県を除き約54億3千万円。1年が経過するが、この分厚い残雪に阻まれ、復旧工事は思うように進まない。

 畦崩落、地割れ、傾きなど農地853箇所、71fに及ぶが、復旧はいまだ6割ほど。「田植えのリミットを6月15日と見て、なんとか復旧したい」(産業建設課)。当初、震災被害地の除雪は災害復旧対象外だったが、「国県要請で災害復旧対象になった。ただ一箇所一度限りの補助」と除雪に取り組む。農道、村道は県残雪対策事業(50%補助)で対応。「この雪処理が最優先。もう降らないでほしい」と担当者は、天気予報をチェックする毎日だ。

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 震災の象徴としてマスコミが取り上げた全壊の「青倉公民館」。震度6強の30分後発生の余震、震度6弱で1階部分を押し潰され崩落。50代を主体に「公民館再建委員会」を立上げ、NPO栄村ネットワークが連携し「青倉公民館再建基金」を全国に支援要請。約6百万円集まり、仮設公民館設置など支援している。

 今月末、青倉公民館は完成。来月1日の年度総会が初使用。自宅は大規模半壊ながら、公民館再建委員長で公民館長の広瀬明彦さん(53)。同委員会が最優先したのは「使いやすさ」。高齢化する集落。「ならば、1階に大広間を作ろう」と40畳スペースを確保。当然、2階部分など建物全体の構造強度が必要。「人が集まる区の交流拠点で、防災の拠点でもある。さらに村を訪れる人との交流の場にもなる」。設計協議を重ね、要望を実現した。

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 「将来的な課題が、今回の震災で目の前に現れた。高齢化とは、家がなくなるとは、子や孫に同級生はいるのかなど、これまで将来的な事と思っていた事が、目の前に突然ドーンと現れ、シビアに考えざるを得ない現実を突きつけられている」。広瀬さんは、考える。実はこれは栄村全体の事であり、中山間地における災害の現実の姿でもある。
 
 その現実を見る時、地元行政のあり方が気になる。震災発生後、「村は県が動くのを待っている感じだった。災害時の危機管理、行政の主導性こそ必要なこと。この小さな村がどう復興していくか、中山間地の復興モデルになる取り組みが求められる。それが出来るはずだ」。

 新しく出来る青倉公民館。区民へのお披露目会を4月末からの連休中に計画している。「今秋、家ができ、復興住宅もでき、見た目の上では復興が進んだように見えるだろう。だが、その時こそ、現実を感じるのではないだろうか」。それだけに復興の屋台骨、復興計画の果たす役割は大きい。

写真・今月末に完成する青倉公民館。来月1日の年度総会が初使用となる

連載「名水のゆくえ」 竜ヶ窪保護への思いは同じ、民間への回答期限は4月末  3月23日号
 「名水」に指定されたがゆえに、民間業者が目をつけたのか。ただ一方で、この名水ブランドが、津南観光はじめ「津南」という名称を広めたのは事実で、多方面への波及効果を生んでいるのは間違いない。

 「水を売ってはならない」、「影響がない範囲の取水で、津南の他の分野へ好影響するなら、連携してもいいのでは」。今回の「竜ヶ窪の水問題」は、過疎化、高齢化、さらには産業の停滞が進む中山間地が直面するさまざまな問題を、いっきに噴出し、今後の津南のあり方を問う問題に発展している。

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 今回の水問題、町内外から多くの反響をいただいた。電話や匿名投稿を含めると30件ほどになる。これまで両論併記で「竜ヶ窪水問題を考える」を載せてきた。その論点の多くは、「古来より守ってきた水。守り続けることが今を生きる住人の責務」「今でも下流域では水不足になる。いまある水をしっかり守ることが必要」。一方で、「大手資本は信用できない。資本力で押されたら、津南町などひとたまりもない」、「世界が相手の民間企業。外国資本に渡る危険性もある」など、日本国内で起こる水問題の影響を懸念する意見も多く見られた。
 
 今回の民間との業務連携を好機と捉える意見も多い。
「年間6千dは、竜ヶ窪の湧出量からみて影響は少ない量。民間の知名度、販売シェアを活用し、津南を売り出すチャンス」、「民間資本を津南町が活用する積極姿勢がほしい。水はこれから貴重な資源となり、町全体の水資源のあり方を考えるチャンス」。さらに、「竜ヶ窪を守ることは、手をつけないことではない。しっかり管理するためにも利水のルールが必要。地元だから自由勝手に使っていいとはならない。有効活用してこそ、地域の資源だ」など、この水資源をどう見るかで、その考え方には大きな開きが出ている。

◇◇◇◇

 最近、津南町の担当者は、竜ヶ窪からの取水を計画する大手コンビニ本社に出向いている。2月に津南町を訪れた同社常務は、「結論を、いつまでも待つという訳にはいきません」と話し、社内的には回答のリミットを決めている様子が伺えた。その期限は、4月末と見られる。

 津南町は今後、再度、地元での説明会を開き、これまでの経過と事業化の説明を行い、理解を求める方針だ。今月25日、地元の一つ、谷内地区は年度総会を開く。同席で「水問題」は議題には載らないが、役員が経過報告をする方針だ。その後、町の説明を受け、臨時総会を開き、谷内地区としての水問題への結論を出す方針だ。
竜ヶ窪という地域財産の問題が、町全体の問題となり、さらには県外の関心事まで広がっている。中山間地が抱える様々な問題の縮図が、この水問題から見えてくる。

写真・水問題の講演会では多くの質問が出た

1期生卒業、津南中等校、「克服するは自己」   3月23日号
 県立津南中等教育学校の第1回卒業式を16日行い、6年前に同校に入学した1期生69人が、通いなれた学び舎を後にした。『夢の実現』を創学理念に掲げる同校。その第一段ステップとして「国公立大に5割以上」の進学をめざしているが、1期生の進路は、国公立大への進学や約3割、20人前後となっている。だが超難関大学の東京大、京都大、さらに北海道大などへの進学者が誕生し、後輩の大きな目標になっている。

 卒業式で本田雄二校長は、大化の改新など日本が直面した歴史的な国難を並べ、特にペリー来港時での国のあり方を問う若き人材たちの立ち上がりを述べ、国難に立ち向かい、突っ走った坂本竜馬、福沢諭吉、近藤勇、土方三蔵などの名を上げ、「皆、君たちと同じ17歳、18歳。同世代が国難に立ち向かった。目先に捉われることなく、将来を見据え、世界で活躍する人材になってほしい」と語りかけ、同校での6年間の学校生活に自信を持ち、『夢の実現』に邁進する強い意思を促した。卒業生代表で東京大に進む小林洋祐さんは「目の前に次々に現れる見たことのない壁。仲間と乗り越えると、光が見えた。克服すべきは自己である。その一つ一つが将来に糧となる。新たなスタートラインに立ち、この6年間の自分を支えに、夢の実現をめざす」」と述べ、1期生の仲間たち69人と共に、在校生や保母者、教職員らの大きな拍手に送られ、6年間通った同校を後にした。なお、今月末までにさらに国公立進学者が誕生する見込みだ。 

十日町・津南地域の病院に「ありがとうポスト」設置  3月23日号
 「医師や看護師の励みになれば」と、『妻有の里 地域医療・地域ケアを支え隊』に参加する高橋孝男・病院を応援し隊代表らが21、22日、県立十日町病院や町立津南病院など管内6病院に「ありがとうポスト」を設置した。県内の県立病院では十日町管内が初めて。高橋代表は「患者さんらからの感謝の言葉により、地域医療を守る一助になれば」と話している。
 
 同ポストは、患者やその家族らが、医師や看護師らに感謝の気持ちを書いたメッセージカードを入れるもので一昨年、兵庫県の県立柏原病院で取組まれたのが始まり。全国の病院で徐々に広がりを見せている。
 
 十日町管内は、人口10万人当たりの医師数が全国平均230人、新潟県191人に比べ118人と県内13保健所管内でも下から2番目の少なさ。こうしたことから「医師が来てくれる環境づくりを」などとポストの設置に乗り出した。同支え隊は、医療の環境づくりに取り組む住民組織「病院を応援し隊」や「受診行動を良くし隊」「小児医療を守り隊」「地域ケアを支え隊」の4団体で構成。うち活動を開始している「病院を応援し隊」が今回設置した。各病院では1ヵ月程度の間隔で回収、関係者に公表することにしている。
 
 最も早く設置した十日町病院では、同隊のメンバーや病院関係者ら10人ほどが参集し待合室付近に設置した。塚田芳久院長は「患者さんやその家族らと我々を結び付ける企画、ありがたい。成果を挙げられるよう我々も努力したい」と話している。

流域に53万尾放流、新潟水辺の会  3月23日号
 ◎…雪解け水で増水した千曲川(信濃川)に17日、5aほどに育ったサケ稚魚を子どもたちが放流した。NPO新潟水辺の会(会長・大熊孝新潟大名誉教授)が毎年行い、今期は流域全体で約53万尾を放流する。水力発電取水と河川環境への関心が高まるなか、今後のサケ回帰に期待が集まる。

 ◎…東京電力西大滝ダム下流、飯山市東大滝地区の河畔で行い、昨年12月に水辺の会がサケ卵を野沢温泉小学校に贈り5年生が飼育。成長したサケ稚魚約4百尾と水辺の会が用意した5万尾を大切に放流した。同校5年の井川佳奈さんは「餌やりなど飼育が大変でしたが、4年後には大きく育って帰って来てほしいです」と川に放流。大熊代表は子どもたちに「帰るのは千尾で2、3尾程度。1週間ほどここで休み、臭いを体に染み込ませ、20日間くらいで海に出る。4年後その臭いを頼りに帰る。そのためにも水量が必要」と話すと子どもたちはうなずいていた。

 ◎…同会では「ダム取水口に稚魚が入らないように迷入防止対策が必要」と事業者の東京電力やJR東に要望している。昨年西大滝ダムには過去最多の35匹のサケを確認。同会では24日、JR東と連携し十日町市の宮中取水ダム下流で25万尾を放流する計画だ。

全国三位、十日町地域消防本部、駅伝大会で  3月23日号
 第23回全国消防本部対抗駅伝競走大会が10日、東京・皇居内濠周回コース(1周4・95`、5人)で開かれ、全国から103チームが出場したなか、十日町地域消防本部がタイム1時間20分41秒で4年ぶりに3位入賞した。またBチームでもある新潟連合も28位と健闘した。優勝は東京消防庁A(1時間17分39秒)。また県内からは他に5チームが出場、小千谷は6位、新発田51位、三条63位、見附64位、長岡71位だった。
 メンバーは次の通り(出場順)
 ▼十日町地域消防本部=宮沢直人(28)遠田祐貴(24)徳永健(33)樋口大棋(24)村山亮(36)
 ▼新潟連合=斎藤裕文(26)太平陽(26)南雲悠延(27)野上宗幸(26)宮澤修(39)

夢へ1歩、東京大、京都大へ進学、津南中等校1期生の進路  3月16日号
 『夢の実現』を掲げる中高一貫校、県立津南中等教育学校(本田雄二校長)の1期生から東京大、京都大への進学者が誕生した。国公立大前期日程の合格発表が行われ、15日までに同校で10人が合格。超難関の東大、京大のほか北海道大、千葉大などの合格者が出ている。今月末発表の後期日程を含めると20人弱の国公立合格が出る見込みだ。1期生で東大、京大の合格者が揃って出たのは、県立中等校7校では初めて。県教育委員会も大きな関心を寄せている。


 「小学5年の時、テレビで見た生物の面白さから研究者になろうと考え、そのためには勉強が必要と、勉強に力を入れると聞いたこの学校を選びました」。津南中等校入学の思いを語る小林洋祐さん。今月10日、東京大(理1)合格を自宅に届いた郵便レタックスで知った。「受験では数学が少しできなかったので、受かっても、落ちても、(東大の)試験はこういうものかという感じでした。合格を見て、ほっとしたのが実感です」。

 なぜ、東京大か。「2年目で進路振り分け制度があり、進める進路の幅が広いことに魅力を感じ、5学年で決めました」。めざす分野は『進化生物学』。生物の進化を通じて地球環境の変化などを研究する。特に関心を抱くのが『大量絶滅』。突然、生物が大量に絶滅することが歴史上に幾度もあり、そんな分野への研究心を抱いている。

 「兄の付録なような感じです。この学校なら進む選択肢が増えるので」と同校入学の小林佳吾さん。2人は水沢小卒の双子の兄弟。京都大合格は9日正午、津南中等校の進路指導室PCで知った佳吾さん。「試験は余り良くなかったので、落ちると思っていましたから、番号を見つけ、驚いたという感じです」。

 京大の「自由な校風」に魅かれた。だが「京大はチャレンジ校でした。化学が好きで、東北大薬学部や東京工大理学部など応用科学の分野へと思っていましたが、後期になり成績が伸び、それなら基礎研究に絞ろうと4学年の時、物理学専攻を決め、校風も自由そうな京大理学部に決めました」。物理学、つまり物質の本質に迫る研究者をめざす。

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 1期生69人は16日、母校を卒業。『夢の実現』を創学理念に掲げる津南中等校。1期生の進路先に、県内外の教育関係者らの目が集まる。それは、多くの県立中高一貫校が市部にあるなか、津南中等だけが郡部の津南町にある。

 開校当時、「あんな不便な所に誰が行く」と、市部の教育関係者などが話題にしていたが、2期生、3期生と関心が高まり広範囲から入学。昨年度は過去最多28校の小学校から入学。それだけに1期生の進学先は同校の「大きな試金石」になっていた。

 「難関大学への合格者が出てくれたこと嬉しい。国公立への進学者数はいま一歩だが、この学校での6年間で、夢の実現への自信をつかんでくれたと思う」。在職3年目の本田雄二校長。今月初めから落ち着かない日々を送っていた。

 主要教科の少人数授業、各種検定、大学訪問、毎日の課題。「学校としてやれることには限度がある。教員のサポート、保護者の支え、ありがたい地域の支援、生徒がこれに応えてくれる頑張りを見せてくれた結果」。土日も学校に来る生徒に対応する先生ら。まさに『受験は団体戦』で取り組んだ。

 「夢の実現。6年間、生徒は自ら頭に染み込ませている。学校全体のムードも大切。1期生がそれを作ってくれた。『やればできる』、学校行事などあらゆる場面でこれを実践してくれた」。本田校長は学校生活で生徒の成長を実感し、進路決定の知らせを受け、それが確信に変わった。

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 今期は全校433人。来月、7期生80人を迎える。生物学者をめざす小林洋祐さん。「入学時、まだ夢が具体化していない人もいるだろう。夢を早く決める必要はないが、夢ができた時に備える準備は必要。勉強への意思を持ち続けること。その動機は何でもいい。あいつには負けたくないとか。夢が具体的になった時、学力があれば、その夢は必ず実現する」。

 初めて兄弟が離れることになる。「自分はこれまで他律的でしたから、自由な校風の京大で自律する自分を創りたい」と小林佳吾さん。「前期は宿題とテスト勉強は集中した。この前期にやりたいことは何でやった方がいい。後期は時間がなくなる。分からない部分は納得いくまで聞き、理解すること」。ふたりが口を揃えるのは、「この学校に来てよかった。自分の選択は正しかった、と思っています」。

 1期生の進路先で15日までに決っている国公立は東大、京大、北海道大、新潟大、千葉大、秋田大、上越教育大など。私立合格では早稲田、慶応、中央、明治、津田塾、東京理科、麻布(獣医学部)、ICU国際基督教大など難関私大が見られ、4大進学率は8割余り。一方、看護学校や専門学校への専門職進学も見られ、就職者もいる。それぞれが『夢の実現』へ一歩を歩み出す。

写真・東大に進む小林洋祐さん(左)と弟の小林佳吾さん(13日、同校で)

連載「名水のゆくえ」 竜ヶ窪の恩恵、周辺に井戸数十本、「再度、話し合いの場を」  3月16日号
 いまだ2bを越える雪に囲まれる竜ヶ窪。上水道や生活用水の慣行水利権を持つ地元の岡、谷内地区では、津南町が実施した住民意向調査結果が出てから「水問題」を口にする人は少ない。「もう茶飲み話にも乗らない。というより、その話はしたくない、というのが本音です」。住民の女性は話す。こんがらがった住民の感情の糸を、解きほぐすのは容易ではない。

 今月末、谷内地区は年度総会を開く。この総会で水問題が議案に載るかどうか、分からない。だが、住民のひとりは話す。「町の意向調査は、あの時点の町の参考資料でしかない。谷内の方針はしっかり決議すべきだ」。例え話を話す。「新しい住人が入り、水道を使う。それに伴い水道料金を払う。それだけのこと。環境を守るのは住人として当然のこと」。

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 大手コンビニが求める取水量は年間6千d。ペットボトルの飲料水販売では少ない量だ。全国9千店余といわれる業界2位の販売シェアからみれば、年間1200万本の生産量は少ない。ただ市場戦略的な商品、あるいは限定的なブランド品として販売するなら、限られた生産量で対応できる。

 その取水量は年間6千d。竜ヶ窪周辺の集落には数十本の個人用、公共用井戸がある。深さは50b前後。道路の消雪パイプ井戸は百b規模。今冬の豪雪で道路消パイや個人用は連日24時間稼動していた。関係者によると、「その使用料は数万dになるだろう。6千dが多いか少ないかを考える時、こうした比較もできる」と話す。竜ヶ窪水道水源から民間が取水を計画し、支払う使用料は1d3百円。津南町の水道料金は1d90円。

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 津南町は、井戸に関する規制条例はない。自分の土地なら自由に井戸を掘ることができ、使用方法の規制もない。「今度の水問題を教訓に、水資源を含む地下資源に関する取り決めが必要ではないか」。竜ヶ窪周辺の住民は話す。

 今回の水問題。「こんがらった」原因は、事業実現を急いだ津南町の拙速さにある。岡の住民は話す。「町の余りにも急ぐやり方が、反対運動に火をつけた形だ。

 大切な水は住民共通の思い。だが、この農業地域で今のままでいいとは誰も思っていない。その一つが竜ヶ窪温泉の実現だ。地域みんなで共同出資した。今回の水事業も同じこと。どこかに共通の思いはあるはず。それを作る前に、町がひっかき回してしまった。もう一度、皆でじっくり話し合う場を設けるべきだ」。
 
 昨年11月の一度きりの住民説明会、新年早々の岡の臨時総会、2月の谷内住民意向調査、これと並行して進んだ「守る会」の計画中止の署名運動。住民同士が情報を共有し、じっくり話し合う場はなかった。今からでも遅くない。

連載「震災地はいま」津南町上野地区、豪雪で復旧遅れ、春耕間に合うのか  3月16日号
 県境地震から1年。震度6弱を記録した津南町。農地被害の復旧が遅れ、さらに今冬豪雪で消雪日が例年より遅れる見込みで、コメ作付けに間に合う完工は厳しい状況。特に震源地に近い、信濃川左岸の水田復旧工事は進んでいない。農地被害総額は約1億7千万円だが、国災害復旧工事の進捗状況は工事費ベースで45%、件数ベースでは7%と低い。住民から「除雪や消雪剤をまくなどで一日も早い着工を」と対応を求める声が上がっている。

 今冬も豪雪で、積雪は現在2b余。気温の低い日が続き、消雪日は例年より遅い5月初旬となる見込み。被害の大きい上野、寺石や羽倉といった上郷地域の田は抜けた畔、法面の崩れ、仮復旧のままの農道などは雪に埋もれたまま。コメ作付けのリミットとされる6月初旬までの工事期間は雪解けからわずか1ヵ月余と短く、消雪対応は急務だ。
約5fの水田を作る、専業農家の石澤春義さん(64、上野)。昨年は1・5fのコメ作付けができなかった。「雪解け水が田の亀裂に入り込み、また被害が大きくなるかもしれない」。地震後、深い亀裂は1b余もあり、確認しにくい小さなものもあるという。もうひとつ、心配がある。「重機が消雪後に田に入るのはいいが、作付けまでに本当に復旧できるのか。工事は天候にも左右され、遅れれば重機が田に入ったままとなり、コメは作れなくなる。工事できる時間は短い」と背丈より高い積雪を見て不安を語る。3月町議会定例会でも町に機械除雪や消雪剤散布など、早期の消雪対策を求める一般質問があったが、支援の明言はなかった。

 町単独で行う農地の小規模被害(工事費40万円未満、被害額約2643万円)を受けた約1・3fは昨年までにほぼ完了。だが大規模被害(同40万円以上、同1億4315万円)約25fの工事発注はほぼ済んでいるが、積雪期のため未着工。理由は大雪だった昨冬の残雪による測量の遅れ、さらに7月に県内各地を襲った記録的豪雨という。建設課・石沢修課長は「昨夏の水害で他地域の業者の応援が見込めず、人手確保が難しい。雪解け後作付けに間に合うように図るが、業者も手が回らない状況にある」と現状を話している。

放射線量測定のモニタリングポスト設置、津南町と十日町市にも  3月16日号
 津南町に放射線を計測する国の「可搬型モニタリングポスト」が先月、町役場車庫わきに設置され、すでに稼働している。稼働後に空間放射線量は同機に付属している電光掲示板で表示。単位は全体の放射線吸収線量である「Gy」(グレイ)だが、「グレイと人体への影響を示すシーベルト(Sv)と大きな差はない」(県環境対策課)という。一方、文科省・原子力災害対策支援本部は「福島隣県の放射線量がどれほどか調べるのが目的」と方針を示す。町の放射線量数値は15日、0・026マイクログレイ前後で、観測地は自然放射線の範囲とみられる。
 

 福島第一原発事故を受け、福島県に354機、隣県6県に130機を設置、新潟県はうち10機。原発事故のあった福島県データはすでに試験運用を開始、ネット上で公開。新潟県には10機を配備。津南町は町役場駐車場、十日町市は市役所駐車場に設置。空間線量データは自動で文部科学省に集積され、10分ごとに放射線量数値を更新。今後、同省ホームページなどで公開する方針。同機電光掲示板は住民も自由に見られる。町総務課・内山純一課長は「国による科学的なデータの蓄積は安心感に繋がる。住民にも周知していきたい」と話している。

十日町で初のコスプレ、商店街に2500人が  3月16日号
 ○…コスプレ、十日町商店街を闊歩―。第1回とおかまちアニメフェスティバルが10日、同市商店街などで開かれた。テレビやアニメ、ゲームなどに登場するキャラクターに扮して商店街をパレードしたのは85人。うち7割ほどが地元の参加者だった。このパレードを一目見ようと中学、高校生などのアニメファンら延べ2500人余りが詰めかけ、「ゲーム機から抜け出してきたよう」などと話しながら、地域初のコスプレ・フェスを楽しんでいた。 
 
 ○…同商店街ににぎわいをと実行委を設けて企画。赤や青の髪のメイド喫茶や人気のバーチャルアイドル歌手・初音ミク、ゴルゴ13などに扮したコスプレが商店街をぞろぞろと3`余りにわたってパレード。またキャラクターをペイントした痛車(いたしゃ)7台が展示され、訪れた若者らは携帯などのカメラで盛んにシャッターを切っていた。実行委では「反響はよかった。費用の関係で規模は小さくなるかもしれないが今後も計画していきたい」としている。

2万本の灯に祈る、震災復興、雪原カーニバル  3月16日号
 ○…東日本大震災や長野新潟県境地震など自然災害への「祈り」をメッセージテーマに10日、雪原カーニバルなかさと2012が10日、同市のなかさと清津スキー場で開かれた。訪れた人たちはゲレンデに2万本のキャンドルを灯し、震災復旧、復興を祈念した。
 

 ○…同カーニバルは昨年、開催直前の東日本大震災で急きょ中止になり、2年ぶりの開催。延べ1万2千人でにぎわった。キャンドルの設置には、10年ほど交流が続く国際学生ボランティアの一行150人も協力。午後6時に点火すると一面は炎の波に揺れる幻想の世界が広がり、会場から大きな歓声が起こった。京都から参加した国士舘大の女学生のひとりは「初めて参加しました。とってもきれいで幻想的。感動しました。キャンドルの灯に震災に負けず頑張って下さいと祈りました」と話していた。

連載「名水のゆくえ」 竜ヶ窪水問題、これ以上の環境変化を防ぎたい  3月9日号
 真夏でも水面に霧が出るほど、水温が低く、清冽な湧水がこんこんと湧き出る「竜ヶ窪」。1985年、当時の環境庁が全国の名水100選を指定した。その第一次指定に入った「竜ヶ窪」。以来、冬は現場には行けないが、ほぼ年間通じて、行楽客や飲料水用にと、水を求めて多くの人が訪れる。その竜ヶ窪が、地元住民、町行政を巻き込んだ「水問題」に直面している。商社系の大手コンビニエンスストアが、竜ヶ窪からの取水計画を津南町に打診し、町は「産業振興の好機」と事業推進。一方、地元住民は、「この環境を守るべき」、「将来的に考えて事業導入を」と割れている。「名水のゆくえ」を3回に渡り、リポートする。

『全国名水百選 竜ヶ窪 おいしい天然水』。神秘的な湖面写真を背景に、文字が並ぶ。昨年7月、竜ヶ窪という社名を持つ株式会社竜ヶ窪が、ペットボトルを発売した。同社は、竜ヶ窪がある津南町の通称・上段台地にある7集落の住民らが共同出資し、温泉ボーリングに成功した温泉施設「竜神の館」を経営する会社。社長ら従業員はすべて地元の人たち。   

 住民にとっては「おらが会社」の、その会社が売り出した名水のペットボトル。2月までに約1万6千本を販売している。販売したペットボトル1本あたり「2円」を竜ヶ窪の環境保全資金として、今月の年度末、地元の竜ヶ窪管理委員会に寄付する。約3万2千円前後になる見込みだ。

 この「水商売」は、すんなり決った。ちょうど1年前の昨年3月、飲料水取水など慣行水利権を持つ地元の「谷内」と「岡」の量集落の年度末総会で、取水の許可を協議してもらった。
涌井九八郎社長は、その総会に資料を持参し、湧出量や湧出の仕組み、取水計画など、詳しく説明した。涌井社長も地元。すべてが顔なじみだが、竜ヶ窪にとって、初めて水を売る事業だけに、慎重を期したが、「賛同をいただき、事業化ができた。取水量が少なく、特に問題にはならなかった」という。

 竜ヶ窪の水は、健康水と言われる「軟水」(19_c/g)のため、全国的な需要が見込めるため、会社としても事業化に乗り出した。特に乳幼児や高齢者に効果的と言われ、さらに健康づくりの水飲料として「軟水」が世界的に注目されている。
取水は、竜ヶ窪の水道貯水タンクへのど導水管途中に取水バルブを付け、取水トレーラーで町外に運び、製品化している。年3回取水し、年間約12dを取水している。

 今回の水問題。大手コンビニが進出を計画している。竜ヶ窪全体の湧出量(季節変動、毎分30d〜20d)から見れば、「大量」とはいえない量だ。だが、「これ以上、環境悪化につながるようなことは、すべきではない」。地元の本音だろう。竜ヶ窪の水と環境を守る会」の内山緑代表は話す。「縄文人も恩恵を受けてきた竜ヶ窪の水。今を生きる私たちは、次の世代に、そのまま引き渡す責務がある」。守る会は今月20日、水の専門家を招き、講演会を計画している。

写真・豪雪が育む「竜ヶ窪 天然水」、この水が注目されている。

連載「震災地はいま」十日町市松之山地区、今秋に復興住宅完成  3月9日号
 過疎化が進む十日町市松之山地区(1日現在969世帯2388人)。長野・新潟県境地震は、のどかな山間地をも容赦なく襲った。住宅被害は全壊24戸、大規模半壊8戸、半壊109戸、一部損壊310戸など。田畑への被害は4百件余りで被害額は約1億円。昨年、コメを作付けできなかった水田は11f余りにのぼった。新年度は1千万円をかけ残る36件の復旧工事に取り組み、ほぼ完了する見込みだ。
     
 震災で、市が応急的に提供した市営住宅や教員住宅などの空き部屋に20世帯55人が入った。
 しかし、これら住宅は老朽化しているのが大半で、市では唯一となる復興住宅を建設する。アンケート調査などの結果から入居を希望する独居高齢者など単身4世帯、家族2世帯の計6世帯分。約1億円をかけ、松之山地区の市営住宅付近に今秋完成予定だ。「これで住宅対策は一応のメドがつくが、要望があれば相談に応じていきたい」(同支所地域振興課)としている。
    
 地震発生直後、土砂崩れが発生し作業小屋と住宅半分が崩れ落ちる被害を受けた松之山中尾地区の高橋英一さん(78)。妻のカズエさん(74)は床と共に転落したが軽い傷程度で済んだ。また隣の住宅も20b余り下に押し流された。現場の復旧工事はまだこれからだ。
 
 夫婦2人暮らしの英一さんは現在、旧東川小・教員宿舎に81歳の独居高齢者と共に住んでいる。復興住宅が完成したら移る予定だ。「関東に子どもがいるが、元気なうちは行きたくない。ここが好きだから」。作業小屋を無くしたが、水田は4反歩ほど作り続ける。「コメ作りは生きがい。自宅と別の所に移った人も多いので、作業小屋の共同利用なども考えてほしい」。
 
 山間集落が点在する松之山地区。土砂崩れで神社が崩落した赤倉地区では、震災復興基金を活用し、6世帯余りの小さな集落ながらも再建に向け取り組んでいる。地元選出の村山邦一市議は「震災で25世帯も転出した。それが残念」と話し、小口誠一支所長は「住民生活に直結するライフラインに問題はない。雪消えと同時に、今後は林道など山間地の復旧に力を入れたい」と話している。

十日町は元気になる」、関口市長の女性の集いに640人  3月9日号
 ◎…関口市政誕生の原動力となった女性たちが一堂に会する関口後援会(佐野良吉会長)女性の集いを4日、クロス10で開き最多の640人が参加、1年後の改選に向け思いを新たなにした。今回も国県来賓は招かず、関口市長挨拶だけのシンプルな集い。同市出身「ベストパートナー」ライブもあり、和やかな集いとなった。

 ◎…市政報告で関口市長は、豪雪、震災、豪雨、さらに豪雪の対応を話し、リニューアルが進み来月8日グランドオープンのクロス10、キナーレへの期待感に言及。飲食部門は専攻して8日から試行オープン。「和の雰囲気の店が並び、その外側にレストランを配置。一新するクロス10でさらに賑わいを作り出したい」と期待感。さらにキナーレ2階は大地の芸術祭作品を展示し、新たな拠点が誕生する。

 ◎…全国モデルの地域協力隊活動は、「いま20人が活動、家族も増え全体で30人余りになっている。中山間地が少しずつ元気になってきている。農水省は新年度から45歳以上対象に最長7年間の支援(年額150万円)事業を始める。十日町市は3年間の協力隊実績があり、すぐに導入できる体制だ」。全国的にも先進的に取り組む市政を強調。雪処理では市道除雪の地元負担について「すべて市費で除雪する計画だ。そのための財源捻出に取り組んでいる」。合併時、職員(770人余)ボーナス12億円だったが、今年度は6百人、約7億円に減少した実態を報告。県立十日町病院改築は「25年度4月着工となり病院周辺は大きく変わる。平成27年には一部開業する」と見通しを示した。

 ◎…関口市長は、来年5月が任期満了。「あと1年。大風呂敷を広げたので、先々の方向性をしっかり示し、まとめ上げていきたい。皆さんとは一つの絆で結ばれている。この絆をさらに強めたい。5年後、十日町市はまちがいなく元気になり、変わる。その階段を間違いなく上がっている、私は実感として、そう感じている。命がけで向かう覚悟だ。その覚悟は寸分も動いていない」と次期への強い姿勢を見せた。

最後の卒業式、上郷中学  3月9日号
 ◎…65年の歴史最後の校歌が母校に響いた。津南町上郷中(中川久男校長、23人)、3330人が巣立った最後の第65回卒業式は5日、耐震化済みの特別棟で開き、卒業生10人に卒業証書が手渡された。1年前、震度6弱の県境地震で閉校の年を母校で過ごせなかった生徒たち。「卒業式は上郷中校舎で」と要望が実り、久しぶりに戻った校舎。卒業生は証書を受け取り、未来への想いを1人ひとりが語った。
 
 ◎…別れの言葉を述べた生徒会長の小林公介君。「この上郷中が大好きでした」。津南中を間借りしての学校生活の苦しさ、仲間との別れを思い、あふれる涙で言葉が出ない。だが最後は力強く「地震は困難を与えたが、その壁を地域、仲間で乗り越え、不安と心配は勇気と自信に変わった。これから夢に向かい羽ばたきます」と語った。3330番目の卒業証書を受け取った涌井大嵩君は「最後の一枚を受け取ったことを誇りに思う。この学校に入学させてくれてありがとう」と母校との別れを惜しんだ。式の最後は卒業生合唱。担任の岩田一紀教諭(31)のギター伴奏で歌う『乾杯』。涙の合唱に大きな拍手が贈られた。
 
 ◎…生徒と共にラストイヤーを過ごした教諭たちも、思いが溢れた。中川校長は「君たちだからこそこの1年を乗り越えられた。自信と誇りを持ち社会で活躍し、上郷の灯を未来に向かって灯し続けてほしい」と目を赤くしながら称えた。卒業生の担任を3年間勤めた岩田教諭は「地震で始まったこの1年。みんなにありがとうの気持ちでいっぱい。泣かないと決めていたがダメだった」と母校を後にする教え子たちを最後まで見送っていた。

「その自信を胸に」、十日町高定時制卒業式  3月9日号
 ◎…「フルタイム勤務後、授業に臨む、その姿に敬服しました。4年間、ついにやり遂げましたね。卒業おめでとう」―。県立十日町高校の定時制卒業式は2日、同校で行い、24人が苦難を乗り越え、学び舎を後にした。卒業生代表の内田一秋さんは、入学時の不安を述べ、「この学校は、人間関係を深く考える場であったし、人間関係の大切さを知り、人を思いやること、人と関わることの大切さを学んだ。多くの方々の支えがあり、今の自分があります。新しい夢に向かい、頑張りたい」と真っ直ぐに前を向き、話した。

 ◎…同校の今年度の在校生は117人。定時制校の存続が行政課題にのった5年前には、考えられない生徒数。当日、卒業生を激励した同校振興会の庭野雅弘会長は、いつも話す。「学びたい希望を持つ子たちがいる限り、学びの門戸は開けておかなければならない」。卒業生の担任、根津欣央教諭が一人ひとりへのメッセージを述べる言葉に、定時制の必要性が込められている。「ある日、泣きながら話してくれたね。3年生になってキミは大きく変わった。その自信をいつまでも胸に。卒業おめでとう」。「いつも笑顔のキミ。その笑顔に先生も仲間たちも救われた。その先の進学も不安だろうが、キミなら大丈夫。卒業おめでとう」。24人へのメッセージに、参列の親たちは涙した。卒業おめでとう。
 

食と観光の連携、魚沼地区業者が合同商談会  3月9日号
 魚沼エリアの農業者、ホテルなど観光業者が集う「3魚沼農業者・観光業者交流商談会」は6日、クロス10で開き、加工品や食材販売する21社がブース出展。旅館経営者や観光協会職員らに、自慢の逸品を紹介。試食などを通し、新たな販路拡大を狙った。

 同商談会は地域特産品の地元活用促進を目的に県が主催。食と観光連携で、地元PRを図る契機にと昨年末に魚沼市、南魚沼市で開き、十日町は3会場目。津南町からはごはん、竜ヶ窪温泉、大地、割野きのこ組合、つなんポークの5店が出店。ホテル業者や飲食店経営者らと直接顔を合わせ、自社ブランドをアピール。    
 
 同商談会を通し新たな取引先を見つける生産者も出ている。出店2回目のつなんポーク・涌井好一社長は「まず知ってもらうのが大切。生産者が同じ場所に集うので比較もされ、こちらも刺激になる。さらに質を向上させたい」と意欲。一方、魚沼市で自然食田舎食堂・囲炉裏じねんを営む駒形博さん(56)は「生産者の方と顔を合わせる機会は少ない。気に入った食材に出会えばぜひ使いたい」と真剣な表情で各店を巡っていた。

復興願い、夜空にランタン飛ばす 3月2日号
 ○…夜空に思いをのせたランタン―。津南雪まつりの25日夜、会場のニューグリーンピア津南に幻想的なランタンの光が夜空を焦がした。震災復興や家内安全などを祈願して企画されたスカイランタン、中には「東北」の文字を書き込んで飛ばした人も。思い思いの願いを込めた淡い光が夜空に舞った。
 
 ○…精霊をまつるお祝いや特別な行事にスカイラタンを使うタイ北部の伝統的な行事を取り入れた。空に放すことで、幸運を呼び込むことができると信じられている。会場では3百個の同ランタンが配られ、一斉に飛ばした。南魚沼市から訪れた青木晶子さん(48)は「家族や震災にあわれた多くの人が幸せになれますようにと祈りました」と話していた。夜空に淡い光を輝かせながらふんわりと浮かんだスカイランタンの幻想的な光景に、会場から「来年もさらに輪を広げ開いてほしい」との声が聞かれていた。

竜ヶ窪水問題、企業「計画通り」、「守る会「地元意志出ている」、町「実現したい」 3月2日号
 全国名水百選の津南町「竜ヶ窪」から取水し、大手コンビニがペットボトル飲料水販売を計画している問題で、上水道利用する地元岡、谷内住民で作る「守る会」は先月28日、取水計画中止を求める署名1120人分を上村町長に提出。同会の内山緑代表は「津南町にとって大切な竜ヶ窪を守りたい。今後も署名運動は続ける」と話す。一方、上村町長は「竜ヶ窪を守りたいという思いは同じ。それをどう守っていくかという手法が違う。地元の皆さんの思いは重く受け止めている」と対応した。

 さらに同日、津南町議会の12人が連名で「「水資源を活用した産業振興プロジェクトの実現は、津南町の浮沈をかけた有効なプロジェクト」と、取水事業の実現を求める要望書を上村町長に提出した。これに対し上村町長は「暮らしが成り立つ津南町のために取り組みたい」と話した。竜ヶ窪の水問題は、住民の反対署名、一方で住民代表の議員多数の推進要望と、全町を巻き込んだ問題に発展し、この水問題は上村町政の根幹を揺るがす問題に発展しそうだ。

 先月26日夜。谷内公民館に住民ら15人ほどが集まった。地元議員と住民の呼びかけで、今回の水問題について話し合った。すでに谷内集落の意向調査で、取水反対50%の結果が出ている中での懇談となったが、事業を進めたい住民多数が参加。住民の揺れる心境が聞かれた。「集落の思いは複雑だ。意向調査では反対が多いが、谷内の将来を考えた時、このチャンスを生かしたいという声もある。だがこれ以上、集落内を混乱させたくない。困ったもんだ」。 

 この混乱ぶりは、隣の岡集落も同じ。懇談会への参加はなかったが、住民のひとりは話す。「臨時総会では1票差で反対を決めたが、その後、色々な声が出ている。総会での決定は決定だが、余りにも情報がない中での総会だったと思う。本来、谷内と同様に意向調査を行う予定だったが、それもできなかった。でもこれ以上、集落内を混乱させたくないというのが本音だ」。

 取水計画中止を求める守る会の内山代表、事業を進めたい上村町長、共通しているのは「竜ヶ窪を守りたい」。だが手法には、決定的な違いがある。それが、今回の水問題の本質部分だ。

 大手コンビニは、1年余りをかけ全国の水を調査した。その結果、飲料水販売に最適な水として全国名水百選「竜ヶ窪」を選んだ。企業の担当常務が、地元で直接関係がある岡、谷内集落で町も同席で説明会を開いた。年間取水量6千d、年間約千2百万本のペットボトル飲料水販売を計画。両集落が現在使う上水道井戸にポンプを入れて直接取水し、「ナチュラル・ミネラルウォーター」で販売。使用料は1d3千円(年間180万円)で購入し、竜ヶ窪の環境保全支援としてペットボトル1本当り0・1円の環境保護費(年間120万円)を支援するという計画だ。

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 この水問題が浮上後、進出を計画する大手コンビニが初めて取材に応じた。

 先月28日、同社の担当常務が上村町長と懇談。住民意向調査結果などの説明を受けた。来町したのは同社の社長直属の特命常務と事業開発グループの担当者。町は、守る会の取水計画中止を求める署名提出、町議会12人連名の事業実現要望提出などを説明。上村町長は事業実現への強い思いを改めて述べた。一方、企業側は「今日受けた説明は会社に持ち帰り協議する」としたが翌日、「事業推進の方針に変わりはない」と町に連絡してきた。
町との懇談後、報道関係者の取材に、「社名を出さない」という条件で応じた。

 なぜ竜ヶ窪なのか。「九州に霧島というPB(プライベート・ブランド)の水がある。その水は硬水。東北地域に軟水水源を求め、宮城、秋田などで調査するなか、竜ヶ窪を紹介いただいた。ひと言で言うと、ここの環境と自然にほれた。水だけでなく素晴らしい自然と環境と人を含め、全国の皆さんに知ってほしいという思い」。
地元の岡、谷内集落が意向を示しているが。「水をとても大切にしている地域であり、それは非常に価値あること。水を長年守ってきた地元の人たちの思い、これを無視しては何もできない。この水を全国の人たちに知ってほしいと思っているが、それは町に任せている」。

 今後の取組みは。「できれば地元住民はもちろん、皆が共生し、神様からもらった財産をプラスに持っていけたらいいと思う。この地域には水だけでなくアスパラも素晴らしく、農協の雪室で素晴らしいものを見せていただき、感動している。皆が前へ進めるような話ができたらいいかなと思っている」。

 守る会の内山代表は企業方針をどう受けとめたか。「まちの対応が問題だ。住民の意思を尊重すると言ってきた。住民の意思が出ているなか、なお進めようとするのは、どういうことか。信じられない」と不信感を募らせている。一方、事業を進めたい町議会の12人。「話し合いが不足している。地域内にはいろいろな声があると聞いている。お互いの話し合いの中で、方向性を見出したい」と、メンバーのひとり、伊林副議長は話している。

連載「忘れない、上郷中学今春閉校」卒業式は母校で  3月2日号
 卒業式を間近に控え、上郷中校舎は再び子どもたちを迎えるため、慌ただしく動いている。「卒業式は母校で」と生徒、学校、保護者らが町教委に要望、式は耐震化している校舎特別棟での開催が決定。5日、全校生徒23人の声が久しぶりに戻る。会場は3階の音楽室と図書室を吹き抜けにし使用。紅白垂れ幕、入退場の赤じゅうたんわきには職員が育てたサクラソウ…。校舎も生徒を待っている。

 「やっぱり最後は思い出が多い上郷中がよかった」。生徒会長の小林公介(15)は喜ぶ。校舎に戻る日を待ち望んだ、3年生10人。公介は「校舎に通えない閉校の年。でもだからこそ体育祭や文化祭で全員がまとまり、絆が深まった」と振り返る。最後に披露する3年生合唱の練習にも熱が入る。「地域の方、先生など、すべての人に感謝を伝えたい」と話す。
 
 地震から1ヵ月後、修学旅行で行った大阪の商店街で義援金を呼びかけた中島美佐子(15)。「私たちも被災しましたが、少しでも町の役にたてればと思って」。地震で生徒の家も全壊や半壊など被害。さらに母校に戻れないと決まった時はショックだった。「でも逆に、校舎は使えなくても最後の年は明るく笑顔でいこうと心がけました」。母校に通えない辛さを、後輩たちには見せたくなかった。
 
 文化祭で3年生7人のバンドを組み、ステージ発表した早河太貴(15)。エレキギターを持ち、150人余を前に熱演。「終わった後、やりきったと感じた。気持ちよかった」。最後だからと初結成。練習時間は1ヵ月余と短いが、土日も練習するなど特訓した結果、大きな拍手を浴びた。「地震や困難があっても、一生懸命やれば何でもできると伝えたかった」。挑戦し続ける、前向きな姿勢を背中で語った。

 春から津南中最高学年となる2年生9人。自宅が校舎近くの河田典(14)は、2b余の雪に埋もれた校舎を見て思う。「3年生は最後の年を校舎で過ごしたかったはずなのに、ずっと笑顔だった」。すべてを教えてくれた先輩たち。地震後も、いつも明るかった。「先輩のように辛くても前向きでいる大切さを伝えたい」。春からは津南中3年生として、学んだことを後輩に伝える。

 兄ふたりが上郷中卒の1年生、高波香里。同級生は4人。兄は中学時代を賑やかで楽しかったとよく語り、入学を心待ちにしていた。だが3・12の激震。同じ校舎には通えなかった。だが香里は休み時間中も後輩の相談を受ける、先輩の姿が印象に残った。「すべてに一生懸命がんばっていると感じました」。兄から聞いた通り優しい先輩に囲まれ過ごす1年。「兄と同じ上郷中生徒として過ごせたのが嬉しい」。先輩たちを見て学んだ、優しさと笑顔。春からの新しい学校生活に不安はない。

 65年の歴史に幕を閉じる日。だが上郷の笑顔は、もう次代へと繋がっている。

松之山出身・吉池、全面改築、東京御徒町駅前に2年後、9階建て新社屋
 松之山出身者が1919年(大正8年)創業、鮮魚や日用品販売、飲食事業、ホテル経営など幅広く事業展開する「吉池」は、今年から2年計画で全面的な改築に取り組む。東京山手線の御徒町駅前の一等地に建つ吉池本店。戦火をあび、復興の東京庶民のニーズに応え急成長している。吉池の創業者、橋與平氏は旧帝国大農学部卒(現東京大)、東京教育大(現筑波大)で学び、小学校長など教職に就いたが時代の変化を感じ、大正8年、東京港区に魚屋を開業。当時、「学士の小学校長が魚屋を始めた」と、月刊誌・主婦の友で特集紹介されるなど、注目の転職をした。創業94年の吉池は2014年4月、同場所に9階建ての新社屋が誕生する。


 昭和8年、現在の御徒町駅前に鮮魚や日用品販売の5階建てビル「吉池」を開業。だが第二次大戦で被災。焼け野原になったがビルは残り、8階まで社屋を増設、業態を広げ飲食事業、宴会・パーティーなど人が集う拠点作りを行い、駅前一等地という地の利で賑わいを見せている。特に新潟県出身者の集いの場になり、取扱商品も積極的にふるさと品を扱い、松之山など十日町、津南地域、さらに新潟県人の心の拠り所になっている。

 今回の改築は、昨年の東日本大震災が大きく影響。平成2年、創業社長の橋與平氏が106歳で死去後、2代目社長に就き、その後、会長に就いた橋登氏(68)によると、伝統のビルは震災で大きなダメージを受けた。「耐震補強には数十億円かかる。商業ビルであり、なによりお客様の安全安心を第一に考え、全面的な改築を決めた」。2年間の工事期間、御徒町駅前に仮設店を設け、販売継続する。

 新社屋は、敷地面積1799平方bに地上9階、地下2階、総床面積1万4387平方bの商業ビルを建設。従来の営業分野のほか売場の約6割をテナント出店を計画し、特色ある店舗展開をめざす。今月末で本店での営業をやめ、4月から仮設店で営業する。現ビル解体後の今年10月に新ビル着工し、2014年4月完成、オープンをめざす。

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 御徒町駅前の吉池本店は県出身者など、ふるさと会の集いや中学、高校の同級会など、懐かしい顔が集う場になっている。
昭和36年、司法試験に合格した東京十日町会の春日寛会長(75)もそのひとり。「当時、越佐法曹会という新潟県出身の集まりがあり、合格後すぐに吉池に連れて行ってもらった。吉池は郷土の人たちの集まりの場。よちよち歩きの私にとって、大人の世界への入口だった。いよいよ全面改築、さらに皆の思いが集まる場になってほしい」。新社屋完成を楽しみにしている。

 春日会長と友に新潟県人会副会長の同郷・松之山中尾出身の東京松之山会・橋秀夫会長(77)は、吉池と深いつながり。「松之山の人は、一度は吉池のお世話になっている。創業者の与平さんは若い人材を大切にし、故郷への恩返しの思いが強かった。その志は今の吉池に通じている」。さらに縁深いのが東京津南郷会。「吉池は津南や松之山、十日町の人たちの心の拠り所になっている。新しい吉池で皆で集まるのが楽しみだ」と江村菊男会長(78)は話している。

 先月28日、「吉池に感謝する会」が同本店で開かれた。百人余りが集い、懐かしい「吉池」を語り合った。

 吉池グループ=大正9年創業。創業者・橋與平氏の生家の屋号から命名。総合小売業、外食事業、ホテル・レジャー事業など各分野をグループ会社が経営。本体は株式会社吉池。グループ会社「吉池放心亭」、「箱根湯元吉池旅館」など多数。北海道に直営工場「吉池西別鮭水産工場」、和菓子・洋菓子(吉池食品製造部)、手作りパン製造(オンディーヌ)などを持つ。橋登取締役会長、橋新平取締役社長、グループ年商約160億円。本社・本店は東京御徒町駅前、吉池ビル。

 

ふるさと応援団・東京津南郷会、会員増強へ  3月2日号
 ふるさと会では老舗の創立60年余の東京津南郷会(江村菊男会長)新年総会を25日、東京御徒町駅前の吉池本店で開き、同会員や津南町などからの来賓など50人余が参加、懐かしいふるさと談義で盛り上がった。津南からは高橋政徳商工会長や伊林康男副議長、草津進総文委員長、さらに東京十日町会の春日寛会長、東京松之山会の橋秀夫会長らも臨席。津南郷会メンバーの草笛や日本舞踊も披露され、友好を深めた。

 総会で江村会長は、「震災からまもなく1年をむかえるが、ふるさと津南町も被災し、津南郷会で義援金支援した。今後もふるさと支援活動を行い、盛り上げたい」と、故郷応援団として支援したいと話した。  

 今年の事業計画では、8月5日に恒例の「からす踊り」を東京松之山会、東京栄村会と共に新潟県人会館で開き、秋には郷土訪問を計画。一方で、会員増強にも取り組む。関東エリアでの行事や集いを開き、「いろいろな世代が加入できるように活動の幅を広げたい」と江村会長は話し、各世代の交友関係を通じて、会員を募っていきたい計画だ。 

 新年総会では、舞台で活躍する坪井久代さん(藤ノ木ゆい、大赤沢出身)が新春らしい日舞を披露し、国内や外国などで演奏活動する草笛奏者、加藤ノイさん(中里出身)が童謡などを演奏し、会場を盛り上げた。
 

自慢の焼いも、栽培農家が行商 3月2日号
 ◎…冬寒の日は、あったかーい焼いもをどうぞー。津南町でサツマイモ栽培に取り組む宮崎朗さん、綾子さん夫婦は昨年末から交代で町内外を軽トラックで周り、焼きたてのほかほかイモを提供している。28日はJA津南町の店舗前で出店。この日は綾子さんが担当。「焼いもは奥が深いですよ。焼き方で甘みが全然違います」と、焼き方を研究したうま味たっぷりの焼いもを販売している。

 ◎…東京生まれ、北海道大卒の朗さん(40)は、1996年に新規就農として津南に来た。長岡市出身で十日町の染織専門学校で独自の手織りに取り組んだ綾子さん(42)。2002年に結婚。夫婦で農業への道。現在サツマイモ30e、雪下ニンジン30e、さいといらずなど大豆1・5f、自家用米30eなどで営農する。昨年、契約作物(種苗)のサツマイモが契約完了し、「イモを使った何かを」とふたりで考え、「焼いも」に至った。友知人やネットで調べ、LPガスを使う遠赤外線オーブンを求め、「どうすれば美味しい焼いもができるか」と研究。その結果、結論を見出した。「実は、イモが甘くなる適温があるんです。その温度でじっくり、時間をかけて焼くと、とっても甘く、美味しくなるんです」。研究を繰り返し、栽培するベニアズマが持つ特性を引き出し、最高の焼きいもができた。

 ◎…「実は、来週からここには来られません。雪下ニンジンが始まるので」。JA津南町店舗前は、来週6日が最後となる。以降はネットなどでの注文販売という。他に雪下ニンジンジュース、炒り豆、きなこ、打ち豆なども販売。宮崎さんのブランドは「はらんなか」。沖ノ原の「原の中」からネーミング。ネット検索できる。宮崎さんрO25・765・3073。


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